考察19 相掛かり07 10手目３四歩型 その２
こんにちは
竜王戦挑決三番勝負の第１局は、伊藤六段が勝利しましたね。後手となった永瀬王座が意表の一手損角換わりを指向しましたが、伊藤六段が急戦策を取らず角換わり腰掛銀の定跡形に誘導しました。先手角換わり腰掛銀に絶対の自信が感じられました。この勝利で伊藤六段がかなり有利な立場ですが、次局先手番となる永瀬王座も必勝の作戦を用意してくるでしょう。８月１４日の第２局は、見逃せませんね。
さて今回は、以前に引き続き相掛かりについてのレポートをあげようと思います。前回のレポートの途中図まで戻したいと思います。
考察15 相掛かり03 8筋歩交換型その２ - 香車は下段から
考察16 相掛かり04 10手目９四歩型 - 香車は下段から
考察17 相掛かり05 10手目９四歩型 その２ - 香車は下段から
考察18 相掛かり06 10手目３四歩型 - 香車は下段から
初手から
▲２六歩 △８四歩 ▲２五歩 △８五歩
▲７八金 △３二金 ▲３八銀 △７二銀
▲９六歩 △３四歩 ▲２四歩 △同 歩
▲同 飛 △８六歩 ▲同 歩 △同 飛
▲８七歩 △８四飛 ▲２八飛 △２三歩
▲７六歩 △４二玉 ▲１六歩 △１四歩
▲４六歩 △８六歩 ▲同 歩 △同 飛
▲４七銀 △９四歩 ▲５六銀 △６四歩
▲４五銀 - 図２６ △９三桂 - 図３２
図２６は、10手目△３四歩からの手順で先手が５六銀を積極的に▲４五銀と進めた局面です。前回は、△３三金および△３五歩とする手順を検討しました。この局面で、AI先生は△９三桂とする手を候補手の一つにあげられていました。ぱっと見狙いが分かりにくいです。負担になりそうな桂跳ねですが、先手からの▲８二歩打を先受けしているとも言えます。さらに調べていきます。
図３２から
▲２二角成 △同 銀 ▲８八銀 △７六飛
▲５六銀 - 図３３ △３三角 ▲６六角
△７四飛 ▲８六歩 - 図３４
先手から角を交換して▲８八銀と８筋をしっかり受けます。これに対する△７六飛に対して、先手悔しいですが一手損を甘受して▲５六銀と引いて４六の歩を守ります。後手からの継続手△３三角打は、次に△８八角成～△７九飛成を狙っており、これをまともに食らっては先手敗勢となってしまうので▲６六角打とこれを受けます。図３４の▲８六歩打は、後手からの△８五桂を防ぎつつ次に▲８七銀として銀冠を築く狙いがあります。
図３４から
△６六角 ▲同 歩 △８四飛 ▲８七銀
△３三銀 ▲５八金 △８五歩 ▲同 歩
△８一飛 ▲６七角 △６二金 - 図３５
再び６六の地点で角交換が行われた後、先手は▲８七銀として銀冠に、後手は△３三銀として矢倉の構えを築きます。しばらく駒組が進むと思いきや、△８五歩の合わせの歩でちょっかいを出しつつ△８一飛と後手好形を目指します。これに対する先手の▲６七角打は８五の歩を守りつつ、▲４五銀～▲３四銀の突進を支える狙いかと思います。
図３５から
▲７七桂 △８三銀 ▲４五銀 △７四銀
▲３四銀 △同 銀 ▲同 角 △７二角
▲２六飛 △３三桂 - 図３６
先手は一旦▲７七桂と跳ねて８五歩を支えた後、狙い通り３四の歩を目掛けて銀を進めます。３四の地点で銀交換が行われた後、後手は△７二角打と「遠見の角」を放ちます。これは、▲２三角成の強襲に対して（△同金には▲同飛成）△２七歩打とする手を狙っています。これを看破すべく先手は一旦▲２六飛と後手の角筋を避けますが、後手も△３三桂と跳ねます（▲２三角成に△２五歩打を用意）。この局面で一区切りとしたいと思います。図３６の局面は、駒割は先手の一歩得、玉の守りは互角、駒の働きは五分だと思います。AI先生も＋互角と評価されています。この後後手は８筋突破を目指してくると思いますが、先手の居玉から離れた位置での戦いと言えます。逆に先手は持ち歩を活かして１筋から攻めることが予想されますが、逆に７二の角の利きを活かして△１八歩打と逆用されかねないので注意が必要ですね。
相掛かり考察シリーズは今回で一旦終了しようと思います。先手９手目の▲９六歩に対する後手の対応を３つ（△８六歩、△９四歩、△３四歩）みてきました。どの対応にしても一局の将棋で、先手が優勢となる局面までたどり着くことは難しかったです。もっと長い手順まで調べるというのも難しく、実戦では自分の力で考えるしかないかなと思います。それでも、ある程度の方向性・指針は見いだせたかなとも思います。ご参考まで。
今回は、この辺りで失礼します。
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