香車は下段から

将棋のブログ。プロ棋戦、自戦記、戦型考察等々。

将棋日本シリーズ JTプロ公式戦 1回戦第四局 広瀬章人八段vs糸谷哲郎八段

こんにちは

永瀬王座への挑戦者が藤井七冠に決まりましたね。ついにここまで来ました。挑決トーナメントの決勝は豊島九段との戦いで相雁木の将棋となりました。160手近くの大熱戦となり、途中豊島九段の粘りが功を奏して逆転の場面もありましたが力及ばずでした。これまでタイトル戦の番勝負で負けなしの藤井七冠のタイトル奪取・八冠達成はかなり高い確率にみえます。注目の第一局は8月31日に神奈川県秦野市「元湯 陣屋」にて行われます。

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さて今回は、先日行われた将棋日本シリーズ1回戦第四局の広瀬八段と糸谷八段の一戦をレポートしたいと思います。公開対局で、福岡県福岡市「福岡国際センター」で行われました。

 

初手から

▲2六歩    △8四歩    ▲2五歩    △8五歩    

▲7六歩    △3二金 ▲7七角    △3四歩    

▲6六歩 - 図1    

振り駒で糸谷八段の先手番となりました。過去の対戦では、広瀬八段が16勝5敗と勝ち越しており、糸谷八段としては公開対局の場で借りを少しでも返したいところでしょう。注目の戦型は、角換わりの出だしから糸谷八段が▲6六歩と角道を止め早速注文を付けました。

 

図1から

△3三角    ▲6八銀    △6二銀 ▲7八金    

△4二銀    ▲4八銀    △4四歩    ▲4六歩    

△6四歩 ▲4七銀    △6三銀    ▲6七銀    

△4三銀    ▲3六歩    △7四歩 ▲3七桂    

△7三桂    ▲4八金    △6二金    ▲2九飛    

△8一飛 ▲9六歩    △9四歩    ▲1六歩    

△1四歩    ▲5六歩    △5四歩 ▲5八玉    

△5二玉    ▲6八角    △4二角    ▲7七桂    

△3三桂 - 図2

雁木調の将棋となり、後手が先手の指し手を追随するミラーゲームとなりました。双方玉を中住まいに構え、角を引いて両方の桂馬を跳ねました。全くの先後同形となりました。図2の局面で駒組の頂点に達して、先手の糸谷八段から攻撃を仕掛けました。

 

図2から

▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △4五桂 - 図3  

▲2九飛    △3七桂成 ▲同 金    △2四歩     

▲5七角    △3三金    ▲4八角    △3二金

▲3八金    △2一飛    (封じ手)▲9八香 - 図4   

▲2四歩と飛車先の歩を突いて戦いが始まりました。中盤戦です。▲2四同飛に対する△4五桂はハッとするで後手4ニの角の効きで飛車取りとなっています。当然それは承知の糸谷八段は▲2九飛と引きつけ桂馬が交換となりました。その後先手後手それぞれ玉形を整える手順が続き△2一飛の局面で封じ手となりました。封じ手の正解は、予想の難しい▲9八香でした。

 

図4から

△2五歩    ▲2七歩    △8一飛 ▲2六歩    

△同 歩    ▲同 飛    △2四歩    ▲2九飛    

△8六歩 ▲同 歩    △同 飛    ▲8五桂打 - 図5 

△8七歩    ▲7三桂成  △同 金 ▲8五桂打  

△8八歩成  ▲7三桂成  △7八と    ▲同 銀    

△8八飛成 ▲6三成桂  △同 玉    ▲8七銀打  

△8六桂    ▲8九金 - 図6   

2筋での折衝が一段落した後、後手の広瀬八段は8筋に飛車を振り戻し早速飛車先の歩交換を目指しました。ここで、糸谷八段の▲8五桂打が用意の一手でした。あまり見ない手筋で、広瀬八段も読み筋になかったようでした。ここら辺の局面から形勢が傾き始め、図6の▲8九金打と飛車を捕獲した局面では、+1,331先手優勢となっていました。糸谷八段の認識の深さが表れました。

 

図6から

△7八桂成 ▲同 金    △8七龍    ▲同 金    

△7八銀    ▲6一飛    △5二玉 ▲9一飛成  

△2五桂    ▲7九桂 - 図7    △8七銀成  

▲8二龍    △4一玉 ▲8七龍    △3一玉    

▲2六歩 - 図8   

広瀬八段苦戦の局面でしたが、図7の手前の△2五桂打ではっきり悪くしたと感想戦で仰られていました。これに続く▲7九桂打で先手の8七の金をすんなり取ることができなくなってしまい、また図8の▲2六歩で打った桂馬が取られる展開となってしました。

 

図8から

△3七桂打  ▲同 金    △同桂成 ▲同 角    

△5五歩    ▲同 歩    △5六銀    ▲同 銀    

△3八金 ▲2七飛    △3七金    ▲同 飛    

△2八角 - 図9    ▲8一龍    △2二玉

▲4七飛    △3七金    ▲6七飛    △3六金    

▲4九香    △5七歩 ▲同 飛    △4六金    

▲同 香    △同角成    ▲4七金 - 図10    

何とか反撃したい広瀬八段も△5五歩の突き捨てから△5六銀のただ捨ての勝負手を放ちます。当然の▲5六同銀に対して、△3八金打で飛車角両取りを掛けてさらに奪った角を2八に打ち込み食い下がりました。しかし、こういう受ける展開は糸谷八段の得意とする展開で、△4六馬に対しても△4七金打としっかり受け崩れません。

 

図10から

△5七馬 ▲同 金    △5一歩    ▲5四桂    

△3三角    ▲8二龍    △5二香 ▲3五歩 - 図11    

△3九飛    ▲4九歩    △1九飛成  ▲3四歩    

△同 銀 ▲4六桂    △4五香    ▲3四桂    

△2三玉    ▲4五銀    △同 歩 ▲2一銀    

△3四玉    ▲3八香 - 図12   

終盤戦です。駒損が大きく広瀬八段の攻めが息切れしたところで、▲5四桂打から糸谷八段が寄せに行きました。▲3五歩打は角頭を攻めるいかにも急所といったところです。執拗に角頭を攻めつつ後手玉を引っ張りだしてからの▲3八香打も厳しかったです。「香車は下段から」ですね。

 

図12から

△3六歩    ▲同 香    △3五銀 ▲3七銀    

△3六銀    ▲同 銀    △3五香    ▲4五銀 - 図13   

△同 玉 ▲4六銀    △3四玉    ▲5六角

まで先手の勝ち

広瀬八段も△3六歩の中合いから△3五銀打と凌ごうとしましたが、糸谷八段もすでに読み切っている様子で▲4五銀から収束を図り、最後は後手玉を即詰みに打ち取りました。

一局を通して、先後同形の局面から難しい中盤戦となりましたが、▲8五桂打の奇手から糸谷八段がペースを掴みそのまま勝ち切られました。広瀬八段としては、超早指し戦で奇手に対する対応をじっくり考える時間がなかったのが辛かったです。糸谷八段の研究・練習量に裏打ちされた深い局面の理解度が象徴的でした。

 

今回は、この辺りで失礼します。

 

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