こんにちは
JT杯将棋日本シリーズ準決勝第1局が行われ、藤井JT杯覇者が永瀬九段破り決勝進出が決まりましたね。王座戦から日が浅い中で行われた公開対局でしたが、連戦の疲れも見せずに快勝された印象でした。絶対王者の勢いが止まりませんね。気になる決勝の相手は、11月3日に渡辺明九段と糸谷哲郎八段との対局で決まります。いずれの方が藤井JT杯覇者の連覇を阻むことができるのか注目です。
さて今回は以前行った後手角換わり早繰り銀の考察を引き続き行っていきたいと思います。前回の考察では、35手目に先手が▲5六歩とする手順を調べましたが、後手もまずまず戦える展開になることを確認しました。今回は、これに代わり▲5六銀と腰掛銀に構える手順を調べていきます。今回も後手番目線の局面図を示していきます。
初手から
▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7六歩 △3二金 ▲7七角 △3四歩
▲8八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀
▲3八銀 △7二銀 ▲1六歩 △1四歩
▲3六歩 △3三銀 ▲4六歩 △4二玉
▲3七桂 △7四歩 ▲7八金 △7三銀
▲4七銀 △6四銀 ▲2九飛 △4四歩
▲4八金 △5二金 ▲9六歩 △9四歩
▲5八玉 △3一玉 ▲5六銀 - 図11
前回の▲5六歩は、先手玉頭を膨らませてバランスよく指す意図がありそうですが、先手番としてはやや消極的で、後手の攻めを受ける展開になりやや不満な感じかもしれません。これに代わり▲5六銀は、▲4五歩からの開戦をちらつかせながら、▲6六歩から歩越しの後手早繰り銀にプレッシャーをかける狙いもありそうです。
図11から
△4二金右 ▲6六歩 △7五歩 ▲6五歩
△7六歩 - 図12 ▲同 銀 △7三銀
▲2四歩 △同 歩 ▲4五歩 △3五歩
▲4四歩 △3六歩 ▲4五桂 - 図13
後手一旦△4二金右と引き締めて戦いに備えます。これに先手は▲6六歩と後手の早繰り銀に圧力をかけます。ここで、△2二玉などの手を指すとすかさず▲6五歩とされて銀を後退させられるため、後手は△7五歩と戦いを起こします。これをすんなり▲同歩とすると△同銀と後手の銀が5段目に進み捌けてしまうので、▲6五歩の反発もこの一手でしょう。後手も△7三銀と後退してしまうと歩損が残ってしまうため、△7六歩と銀取りで返します。ここら辺は、引いた方が悪くなりそうな感じです。6筋、7筋の折衝が落ち着いて手番の先手は、2筋、4筋の歩を突き捨て攻め立てます。これに対する△3五歩はAI先生が推奨する強い手です。▲4五桂と捌いた図13は、先手の囲いは乱れてますが、先手の駒が後手玉頭に迫っており非常に緊張感のある局面です。
図13から
△4四銀 ▲7四歩 △同 銀 ▲2二歩
△同 金 ▲2四飛 △3五角 - 図14
▲3四飛 △3三桂 ▲7五歩 △8三銀
▲6六角 △4三金 ▲3五飛 △同 銀
▲5三桂成 △同 金 ▲3四歩 - 図15
中盤の難所です。先手が攻める展開となり、後手はここで間違えたら一気に寄せられそうな局面です。後手が△4四銀と桂先の銀で受けたのを見て、先手は▲2二歩~▲2四飛と捌きます。これに対する△3五角(図14)は強い受けですが、先手は飛車を▲3四飛と潜り込み攻めの継続を図ります。先手は攻めだけでなく、▲7四歩~▲7五歩として後手の銀の位置を悪くする手を入れているのも後手としては痛いところです。▲6六角打から飛車を切り飛ばして▲5三桂成~▲3四歩打(図15)とした局面は、後手の囲いが薄く、先手の6六角の利きが強く、右辺の飛車銀の働きが悪いため攻め合いにも持ち込めず後手苦戦の局面にみえます。しかし、AI先生の評価は+116互角を示しており、後手まだまだ戦えると仰っています。もう少し調べていきます。
図15から
△4四歩 ▲3三歩成 △同 金 ▲4五桂
△4三金右 ▲3三桂成 △同 金 ▲4五金 - 図16
△2八飛 ▲5五角 △4六桂 - 図17
▲3三歩成~▲4五桂打~▲4五金打(図16)と先手の角筋を活かした厳しい攻めが続きます。しかし冷静に局面をみると、駒割は角金と飛桂の交換でそれほど差がありません。後手も図16の局面で△2八飛打と攻め合いを目指して、▲5五角の飛び出しに対しても強く△4六桂打(図17)の王手でカウンターを放ちます。
図17から
▲6七玉 △5二飛 ▲4九金 △4三桂
▲9一角成 △4五歩 ▲8一馬 △7二歩
▲8二馬 - 図18
△4六桂に▲同金とするのは、△6六桂打(図D)とする手があるようです(▲同角に△4六銀の狙い)。▲6七玉の逃げに対して後手も一旦飛車を逃がす△5ニ飛が必要で、これを見て先手も一旦▲4一金と逃がします。△4三桂打は、後手の角に当てつつ上部に出てきた先手玉の入玉を防ぐ駒として働きそうです。図18の▲8二馬の局面は、後手銀取りで忙しいそうですが手番がきており何とかできそうな局面です。この局面から a)△6六金打と一気に攻める手と、b)△4四銀と力をためる手を見ていきます。
図18から a)△6六金
▲同 玉 △7八飛成 ▲8三馬 - 図19
△6六金打からは一本道の展開になります。▲6六同玉に△7八龍と先手玉の背後から迫りますが、先手の玉は2枚の銀に守られ寄せが見えません。中段玉寄せにくしですね。▲8三馬と銀を取られた局面は、入玉を含みにして先手が指しやすい局面にみえます。AI先生も+798先手優勢と評価されています。
図18から b)△4四銀
▲8三馬 △5五銀 ▲同 銀 △同 桂 - 図20
▲7七玉 △6八銀 ▲8八玉 △6九銀不成
▲4八桂 △7八銀成 ▲9七玉 - 図21
△4四銀に対して▲8三馬と銀を取られるのは後手痛いですが、△5五銀とぶつけて先手玉に迫ります。図20の△5五同桂の局面で、先手入玉を目指すなら上部に逃げたいのですが、△7八龍で金を取られてしまいます。この場合、図19の局面と違い先手玉の守りは銀一枚しかありません。そこで止む無く▲7七玉と金にヒモをつけながら逃げますが、先手の入玉の可能性が大分下がり後手としてはかなり安心できる展開です。以降後手は、先手玉と金を攻め立てていきます。△7八銀成に本譜▲9七玉と逃げましたが、▲同玉には△6六金打として銀取りにしながら上部を抑えつける手があるようです。図21の局面は、寄せ切るにしても入玉するにしてもまだまだ長い展開が予想されますが、AI先生の評価は-340後手有利を示しており若干後手が指しやすそうな局面なのかもしれません。
後手角換わり早繰り銀の考察はここまでとしたいと思います。3回目の今回は手数が長くなりましたが、概して後手は強い手が求められる局面が多くあったように思います。相居飛車の戦いらしく引いてしまうとそのまま悪くなってしまうのかもしれません。本考察を活かして実戦でも強い指し手を選べたらと思います。ご参考まで。
今回は、この辺りで失礼します。
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