香車は下段から

将棋のブログ。プロ棋戦、自戦記、戦型考察等々。

考察27 相掛かり持久戦同型その2

こんにちは

SUNTORY将棋オールスター東西対抗戦2023東京予選Cブロックが行われて増田康宏七段本戦入りを果たしましたね。これで東西のファン投票選出者と予選勝ち上がり者が全員決まりました。東西各チームは以下の通りです。

(東軍)

羽生善治九段、渡辺明九段、永瀬拓矢九段、

青嶋未来六段、野月浩貴八段、増田康宏七段

(西軍)

藤井聡太竜王名人、豊島将之九段、菅井竜也八段、

山崎隆之八段、稲葉陽八段、久保利明九段

そうそうたるメンバーが出揃いましたね。本戦は12月下旬に行われますが、誰が誰と対戦するかも楽しみです。

times.abema.tv

 

さて今回は以前行った相掛かり持久戦同型の考察の続きをしていこうと思います。まずは局面を基本図まで戻したいと思います。

基本図から b) ▲4五歩    

△8八角成 ▲同 銀    △4二銀 - 図4   

前回の考察では、基本図で先手から角交換をして銀を中央に使っていきましたが、後手から先行されて先手面白くない展開となりました。代わる手段として本譜▲4五歩がプロ棋戦でも指されています。後手の囲いの進展を防ぎつつ▲4六角と好位置に据える狙いもありそうです。これに対して後手は角交換から△4二銀と中央を固めます。先手が先行する展開になりそうですが、後手番なのである程度受け身になるのはやむを得ないかもしれません。図4は先手の分岐点でa) ▲6六歩とb) ▲6六角打をAI先生は候補にあげています。

 

図4から a) ▲6六歩    

△2二角    ▲7七銀    △6五歩 - 図5

▲4六銀    △6六歩    ▲6九飛    △5三銀    

▲4七玉    △7五歩 - 図6

▲6六歩は囲いを膨らませつつ後手からの△6五桂跳ねを防ぐ狙いがありそうです。但し、玉のコビンが空いたり△6五歩から後手が攻める争点を作ってしまっている点が気になるところです。これに対して、後手は△2二角打と遠見の角を放ちます。6六の歩を受けて▲7七銀と上がりますが、△6五歩から後手の攻撃が始まります。先手▲同歩と取ると△6五桂とされ後手の攻めが加速するため、じっと▲4六銀と力をためます。続く△6六歩の取り込みにも▲6九飛と回り6筋を補強します。このあたり先手は、後手から突っかけられた歩が取れず、守勢に立たされています。先手が▲4七玉と中段玉に早逃げして、後手が△5三銀と上部を補強してから△7五歩と攻めの継続を図った図6の局面は、先手面白くなさそうにみえます。AI先生の評価も-252互角となっており後手が指しやすそうな展開です。局面を図4に戻してb) ▲6六角打をみていきます。

 

図4から b) ▲6六角    

△3三銀    ▲7七桂    △5五歩 - 図7 

▲同 歩    △4四歩    ▲9五歩 - 図8   

▲6六角は難しい手です。香取りの先手ですが△3三銀と防がれた後の継続手が見え難いです。▲7七桂と先手が力をためたのをみて、後手は△5五歩と突っかけていきます。互いの玉頭で怖いところではありますが、先手の左銀が中央に利いていないため後手からのこの攻めがあるのかもしれません。先手の▲同歩に対して後手が△4四歩と攻めの継続を図ろうとしたところで、先手▲9五歩と端から仕掛けます。▲6六角はこの端攻めの狙いもあったようです。後手の桂馬が跳ねているため端の守りが弱くなっている点を突いています。攻め合いの展開になっていきます。

 

図8から

△4五歩    ▲9四歩    △4六歩 ▲同 銀    

△5六歩 - 図9   ▲4七金    △6五歩    

▲4八角    △6四銀 ▲4五歩 - 図10

後手は4筋、先手は9筋の歩を進め攻め合いです。後手の攻めの方が玉頭からきているため、先手としては注意が必要です。△4六歩と歩を取り込みながら銀取りに当て▲同銀に△5六歩(図9)といやらしい垂れ歩を設置します。次に△6五歩があるため、▲4七金と角の逃げるスペースを作る一手が必要になります。それでも後手は△6五歩として▲4八角に△6四銀とさらに玉頭への圧力を高めます。最終▲4五歩(図10)も必要な一手で、先手▲9三歩成と攻めると△4四銀(図B)と出られて後手の進軍が止まらなくなりそうです。ここで一区切りにしたいと思います。図10の局面をAI先生は-91互角と評価されています。差はついていないものの、先手は端、後手は玉頭と攻めている場所が大きく異なり、先手の端攻めを交わしながら△4一飛と玉頭攻めに加勢する味の良い手もあります。また5六の垂れ歩も先手の脅威となっており、▲5六金としようものなら△3八角打(飛車金両取り)を喰らってしまいます。後手が指しやすそうな局面にみえます。

相掛かり持久戦同型の戦いをみてきましたが、後手が十分戦える変化が多くみられました。先手としては、もっと前の段階で同型になることを防ぐ何らかの工夫が必要なのかもしれません。ご参考まで。

 

今回は、この辺りで失礼します。

 

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