こんにちは
新人王が決まりましたね。まだ順位戦にも参加されていない新人の上野裕寿四段が棋戦初優勝を飾りました。プロ入り三戦目での優勝は史上最速のようですね。敗れた藤本渚四段もかなり勝ちに近付いた局面があったようで残念だったことでしょう。両者は、井上九段を師匠とする同門の棋士で、今回は兄弟子の上野四段が意地を示したといったところでしょうか。今後も同門同世代棋士同士で切磋琢磨して益々活躍されることでしょう。
さて今回は、先日行われたNHK杯2回戦第13局を振り返りたいと思います。2回戦で戦うのはもったいないくらいの対戦でした。対局者を知らずに放送を観ていたのですが、思わず目が覚めましたね。注目の対局は、後手番豊島九段の誘導で横歩取りの将棋になりましたが、89手目で千日手となりました。双方打開が難しかったようです。先後を入れ替えて行われた指し直し局は、角換わりの将棋となりました。早速みていきましょう。
羽生善治|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)
豊島将之|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)
初手から
▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7六歩 △3二金 ▲7七角 △3四歩
▲6八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀
▲4八銀 △3三銀 ▲3六歩 △6二銀
▲3七銀 - 図1
指し直し局は、豊島九段が先手番となりました。いつもながら序盤は早いペースで進み、角換わりの将棋となりました。図1の局面で豊島九段が▲3七銀と繰り出し、早繰り銀模様の将棋となりました。
図1から
△7四歩 ▲7八金 △7三銀 ▲4六銀
△6四銀 ▲1六歩 △9四歩 ▲3五歩 - 図2
△同 歩 ▲同 銀 △8六歩 ▲同 歩
△8五歩 - 図3
後手の羽生九段も追随して相早繰り銀となりました。双方、右側の端歩を突いた局面で先手の豊島九段が▲3五歩と仕掛けました。先後ともに居玉の状態です。近年の将棋は、囲いもそこそこに早い段階で仕掛ける将棋がよくみられます。いきなり攻め倒すのではなく、少しずつポイントを稼ぐような感じでしょうか。先手からの仕掛けに対して後手も△8六歩~△8五歩と手筋の継歩で反撃をします。誤って▲8五同歩は△同飛とした局面が3五銀と8九桂の両取りの十字飛車があるので要注意ですね。
図3から
▲3四歩 △2二銀 ▲6六歩 △8六歩
▲8八歩 △3三歩 ▲6五歩 - 図4
△7三銀 ▲3三歩成 △同 銀 ▲4六角
△4五角 - 図5
手数は少ないですが既に中盤戦です。先手が一旦▲3四歩打として後手の銀を後退させてから▲6六歩と将来の角打ちの筋を未然に防ぎます。これに対して、後手も△8六歩と取り込み▲8八歩打と先手左辺を壁にしてポイント取ってから△3三歩打と先手の拠点を消しにかかります。これを先手は無視して▲6五歩と反発してから▲4六角打として後手の飛車に睨みを利かせながら2筋突破を目論みます。一見好位置の角打ちにみえましたが、羽生九段は読み筋とばかりにノータイムで△4五角打と筋違いの角で反発しました。この角も7八の金を睨みながらながら先手の飛車先にも利いている好角にみえます。このあたり中盤の押し引きは見応えありましたね。
図5から
▲7五歩 △8四飛 ▲2四歩 △同 歩
▲3四歩 △同 銀 - 図6 ▲同 銀
△同 角 ▲5六銀 △2五歩 ▲6六銀
△3三歩 - 図7
手番の先手は▲7五歩~▲2四歩の突き捨てから▲3四歩と銀取りに叩きましたが、羽生九段は強く△同銀。△2二銀とは引かずに強く前に出る手は、羽生九段らしいところでしょうか。銀交換が行われてから先手豊島九段は▲5六銀打~▲6六銀と中央を手厚くしました。これに対する羽生九段の△3三歩打も渋いです。▲3八飛とされた際に角取りとなる手を未然に防いでいるのかもしれません。図7の局面は、AI先生の評価で+51互角となっており、バランスが保たれた局面のようです。
図7から
▲7七桂 △7六銀 ▲7四歩 △同 飛
▲3五歩 △1二角 ▲2五飛 △2二歩
▲3七桂 - 図8 △5六角 ▲同 歩
△3六銀 ▲2六飛 △4七銀成 - 図9
中盤のねじり合いが続きます。先手▲7七桂と遊び駒を活用しますが、後手△7六銀打と丁寧の受けます。先手左辺の折衝が落ち着いた後、今度は右桂を▲3七桂と跳ねさらに遊び駒を活用しました。しかし、局後の感想戦で豊島九段が危ない手だったかもしれないと話されていました。というのも、本譜の通り後手に角切りから先手玉頭に成銀を作る強襲があったからです。図9の局面は、角取りにもなっており先手が一見厳しそうにみえましたが、豊島九段は上手い切り返しを用意されていました。
図9から
▲6四歩 △同 銀 ▲3六角 - 図10
△4六成銀 ▲6三角成 △8四飛 ▲4六飛
△6二歩 ▲3六馬 △8九角 ▲7九歩
△6七銀成 ▲5七銀打 △7六歩 - 図11
豊島九段用意の手順は、▲6四歩~▲3六角打でした。成銀取りと▲6三角成の両狙いです。よく見えていますね。成銀を取られるわけにもいかず、羽生九段は角成を甘受しますが手番が回ってきました。早速△8九角打と金取りに放ち、底歩に△6七成銀と進出しました。豊島九段の▲5七銀打とした頑強な受けにも△7六歩打として、羽生九段の攻めが先手陣に刺さり始めました。AI先生の評価も-793後手有利と振れました。
図11から
▲6七金 △同角成 ▲6八歩 △6六馬
▲同 銀 △7七歩成 ▲同 銀 △8七歩成
▲4四歩 △同 歩 ▲8七歩 △5七銀
▲4七飛 - 図12 △6五桂 ▲4八金
△同銀不成 ▲同 玉 △5七金 - 図13
後手の攻めが先手玉頭に迫っており、局面は終盤戦です。羽生九段の攻めに対して、豊島九段も冷静に対応して差は広がりませんでした。図13の局面で王手飛車取りが掛かりましたが、二枚替えとなる手で差が詰まっていきました。AI先生の評価も-167互角まで豊島九段が盛り返しました。
図13から
▲同 飛 △同桂成 ▲同 玉 △5九飛
▲5八金 △1九飛成 ▲2四桂 △3一金打
▲7六角 △5四香 - 図14 ▲4三歩
△2八龍 ▲3二桂成 △同 金 ▲2五馬
△5二金 - 図15
羽生九段の△5九飛打の王手を▲5八金打で弾いて豊島九段が手番を得ました。豊島九段▲2四桂打~▲7六角打と飛び道具で厳しく迫りましたが、羽生九段も△3一金打~△5四香としっかり受け崩れません。本譜▲2五馬と覗いたあたりで再び形勢が後手に傾き、△5ニ金のあたりは羽生九段が勝ちを読み切っているようにみえました。
図15から
▲4二金 △同金左 ▲同歩成 △同 玉
▲3一銀 △同 玉 ▲5二馬 - 図16
△3七龍 ▲4七金打 △5六香 ▲同 玉
△6五銀打 ▲6七玉 △7六銀 ▲同 銀
△7五桂 - 図17 ▲7八玉 △8七桂成
▲同 銀 △8九角 ▲8八玉 △8七飛成
▲同 玉 △4七龍 ▲同 金 △8六歩
まで142手で後手の勝ち
豊島九段は最後の猛攻を試み▲5ニ馬と詰めろをかけましたが、羽生九段は既に超手数の詰み手順がみえていました。△3七龍の王手から入り、途中の△7五桂打が好手で最後は二枚に飛車を切り飛ばして△8六歩と叩いたところで豊島九段の投了となりました。20手以上の詰み手順を短時間で読み切られた羽生九段はやっぱり神ですね。
一局を通して、早い段階で戦いが起こった後の長い中盤戦が非常に見応え多ありました。ポイントを稼いで、相手の拠点を消しにかかり、苦しそうな局面での角打ちの切り返しなど。終盤は、羽生九段が局面を読み切り、しっかりと豊島九段の攻めを受けてからの最後の超手数の即詰み手順は圧巻でした。会長強いですね。今後も勝ち上がりが楽しみです。
↑↑↑水匠5での解析結果↑↑↑
今回は、この辺りで失礼します。
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