香車は下段から

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SUNTORY 将棋オールスター東西対抗戦2023 その1

こんにちは

先日クリスマスイブの日に将棋イベント「SUNTORY将棋オールスター東西対抗戦2023」が行われましたね。東西それぞれファン投票で選ばれた3名と予選を勝ち上がってきた3名の合わせて6名がチームとなり戦う団体戦です。結果は既報の通り西軍が4勝2敗で勝利されましたが、どの将棋も早指しとは思えない見応え十分なものばかりでした。今回は、全体局を簡単に振り返りたいと思います。

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第1局 先手:永瀬拓矢九段(東) 後手:豊島将之九段(西)

永瀬拓矢|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

豊島将之|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

一局目からド重量級の一戦となりました。序盤角換わりの手順に進みましたが、豊島九段がこれを避ける形で角道を止めたまま駒組を進める工夫をされました。角換わりの研究を外す有力な作戦なのかもしれません。これに対して永瀬九段は、飛車先の歩を交換した後、爽やかに棒銀を繰り出して行きました(図1)。2筋での銀交換が行われた後、1~3筋での攻防が繰り広げられましたが、豊島九段が上手く受け止め逆に先手攻撃陣に圧力をかけ盛り上がっていく展開となりました。以降永瀬九段は左辺から馬を作り食い下がりましたが、豊島九段が冷静に受け止め馬飛車交換の後にじっと上がった△5ニ玉(図2)で捕まらない格好になり、最後は鋭く先手玉を寄せ切りました。豊島九段の受けの強さが光りました。

↑↑↑水匠5での解析結果↑↑↑

 

第2局 先手:菅井竜也八段(西) 後手:渡辺明九段(東)

菅井竜也|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

渡辺明|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

現代振り飛車党の最強棋士菅井八段と、言わずと知れた超トップ棋士で対抗形の将棋に滅法強い渡辺九段の一戦です。予想通り対抗形の将棋となり、菅井八段が向かい飛車に飛車を振りました。双方玉を深く穴熊に囲い、先手の菅井八段が3筋から仕掛けていきました(図3)。中盤以降、双方の飛車が抑え込まれる展開となりましたが、菅井八段が鋭く角と飛車を切り飛ばし(図4)一気に決まってしまうかという展開になりました。

しかし、ここから渡辺九段も冷静に対応して苦しいながらも耐え続ける展開となりました。これが功を奏し、一瞬の緩手を突いて反撃し形勢を盛り返しました(図5)。以降は、渡辺九段が冷静に間合いを図り先手玉を寄せ切りました。渡辺九段の冷静な受けと、一瞬のスキを突く瞬発力が素晴らしかったです。2度放たれ先手玉を破壊した△3七桂打がとても印象的でした。

↑↑↑水匠5での解析結果↑↑↑

 

第3局 先手:野月浩貴八段(東) 後手:稲葉陽八段(西)

野月浩貴|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

稲葉陽|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

居飛車党で早指しが得意な棋士同士の対戦となりました。戦型は大方の予想通り、双方得意の相掛かりとなりました。野月八段は、早めに飛車先の歩交換を果たし、飛車を深く引いてから銀を繰り出していきました。これに対して研究手順だったのか、稲葉八段は指し手も早く五段目に飛車を動かし7筋で歩の交換を果たしました。これに野月八段が反発して角銀を使って後手の飛車を責め立てましたが、ここで突如飛車をぶった切る△7八飛成(図7)が飛び出しました。以降激しい展開となりましたが、野月八段が玉を中段に逃げていき5五の金取りにも構わず後手の玉頭5三の地点に執拗に攻めていったが鋭かったです(図8)。以降野月八段が鋭く後手玉に迫り後一歩のところまで追い詰めましたが、最後の寄せで誤り稲葉八段が辛くも勝利を得る結果となりました。早指しならではのスリリングな展開が凝縮された一局でした。

↑↑↑水匠5での解析結果↑↑↑

 

第4局 先手:久保利明九段(西) 後手:青嶋未来六段(東)

久保利明|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

青嶋未来|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

タイトル経験のある関西を代表する久保九段とオールラウンダーで居飛車振り飛車も指しこなす青嶋六段の一戦です。両者練習将棋も含めて全くの初対戦とのことでした。将棋は対抗形の将棋となり、久保九段が三間飛車に振り美濃囲いに構え、青嶋六段が穴熊に構えました。後手の穴熊が堅陣になる前に久保九段が軽快に仕掛ける展開となりました(図9)。中盤以降評価値的には久保九段が指しやすい局面が続きましたが、青嶋六段は2、3筋の玉頭戦に持ち込み穴熊の遠さを活かして先に先手玉に迫りました(図10)。

3七の地点をめぐる攻防が続きましたが、久保九段の放った▲5五角打(図11)が鋭く(次に▲4五馬 △同香 ▲2三桂打の狙い)リードを奪います。しかしながら青嶋六段も△3ニ金とじっと耐え、以降先手の一瞬の緩手を咎め一気に先手玉を寄せ切りました。穴熊ならではの間合い、勝ち方が堪能できる一局でした。

↑↑↑水匠5での解析結果↑↑↑

 

これで東軍西軍いずれも2勝2敗となり面白い展開となりました。今回のレポートはここまでとします。第5局、第6局そして最後に行われたリレー将棋は別にレポートあげたいと思います。

 

今回は、この辺りで失礼します。

 

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