こんにちは
王将戦の挑戦者が決まりましたね。最終局で近藤誠也七段に勝利した菅井竜也八段が5勝1敗となり堂々の挑決リーグ1位となりました。これで今季の叡王戦に引き続き藤井王将にタイトル戦で戦うことになりました。先の叡王戦では、三間飛車を連投してかなり良い勝負繰り広げていました。叡王戦後も菅井八段は勝ちまくっており、今年度20勝8敗と好調を維持されているようです。振り飛車党総帥がどこまで絶対王者を苦しめるか注目ですね。
藤井聡太|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)
菅井竜也|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)
さて今回は、以前に引き続き角換わり腰掛銀の平成型と令和型の攻防について考察していこうと思います。局面を図8まで戻してb) △3三桂とする指し手をAI先生と調べていきます。
図8から b) △3三桂
▲同桂成 △同 銀 ▲4八金 - 図17
△4四銀 ▲4七銀 △3三銀 ▲5六銀
△4六角 ▲7五歩 △6三銀 ▲5五桂
△6四銀 - 図18 ▲4七金 △5五角
▲同 銀 △同 銀 ▲7四歩 - 図19
本譜△3三桂は積極的な手で、後手の玉頭に利いている嫌味な先手の4五桂を消しつつ桂馬を手持ちにする意図がありそうです。桂馬の交換後、先手は▲4八金と引いて形を整えます。4六の歩が浮いてしまいますが、誘いのスキで△4六角と飛びついてきたのをみて▲7五歩と後手の桂頭を攻めます。桂頭を守る△6三銀に対しても▲5五桂打と追撃します。図18がまた先手の分岐点で本譜の▲4七金以外に▲7四歩が考えられます。▲4七金に対して後手は△5五角以から二枚替えの駒得を図りますが、先手も▲7四歩として桂馬を取り返すことができます。
図19から
△3八銀 - 図20 ▲7三歩成 △同 金
▲7四歩 △6四金 ▲7六桂 △8四桂 - 図21
▲6四桂 △同 銀 ▲7二角 △7一飛
▲8三角成 △7六歩 ▲6八銀 △2九銀成
▲8四馬 △8一飛 ▲7三歩成 - 図22
図19の局面でまず目に付くのは△3八銀の飛車金両取り(図20)ですが、この局面では緩手とAI先生をみており▲7三歩成から先手が猛攻を仕掛けます。▲7四歩打で後手の金を上ずらせて▲7六桂打と金取りに放ちます。次に▲6四桂と金を取る手が王手となるため、後手は先手の飛車金を取る余裕はありません。AI先生の推奨する桂に桂をぶつける△8四桂打(図21)は、なかなか見えにくい手です。構わず▲6四桂と王手で跳ねてから▲7二角打と飛車取りに打ちます。後手は△7一飛と角に当てて何とか手番をものにして、△7六歩と楔を打ちようやく△8九銀成で先手の飛車を手に入れます。ここで再び手番が先手に移り、▲8四馬と桂馬を奪い続く△8一飛の馬取りも無視して▲7三歩成が上手い手です。仮に△8四飛と先手の馬を取ると▲6三角打から後手玉が詰んでしまいます。図22の局面は先手勝勢です。ということで図20の局面で△3八銀とはできず、もっと厳しく△7六歩と打つ手が勝るようです。
図19から
△7六歩 - 図23 ▲同 銀 △6四桂
▲7五銀 △7六桂打 - 図24 ▲7七玉
△8四銀 ▲6四銀 △同 銀 ▲7三歩成
△同銀左 ▲5六金 - 図25
△7六歩から後手は持ち駒の桂馬2枚を使って先手玉に迫ります。図24の△7六桂の王手に対して9筋に逃げるのは、いかにも玉が狭く簡単に寄せ切られそうです。そこで桂先玉寄せにくしで▲7七玉と逃げますが、△8四銀打からお互いの玉頭で威張っていた先手7五銀を消し去ります。先手▲7三歩成で桂馬を取りますが、△3八銀のキズがあるため▲5六金の一手が必要になります。図25の局面は先手駒得ですが守りが薄く、AI先生の評価も-118互角ですが先手苦戦にみえます。
局面を図18まで戻します。図18から▲4七金をみてきましたが、いずれの変化でも常に△3八銀打のキズを抱えておりどこかで形を整える一手を入れる必要がありました。先にも述べましたがここでは▲7四歩とする手が勝りそうです。
図18から
▲7四歩 - 図26 △7六歩 ▲6八銀
△5四歩 ▲7三歩成 △同 銀 ▲7五歩 - 図27
△6四桂 ▲5八桂 - 図28
先手からの▲7四歩は後手の玉頭にも近く厳しい一着ですが、後手からの△7六歩はさらに厳しそうです。▲同銀とすると△8四桂で銀を取られてしまうため、先手▲6八銀とするのは仕方なさそうです。さらに後手は△5四歩と桂取り放ち、先手の攻め駒を責めます。ここでAI先生の推奨する▲7五歩打は難しい手で、意味が分からないです。後手から△7五桂打など”敵の打ちたいところに打て”が理由なのかもしれません。後手は嵩にかかって△6四桂打と銀取りで迫りますが、先手も▲5八桂打とカウンターを放ちます。
図28から
△5五角 ▲同 銀 △同 歩 ▲6六歩 - 図29
△6三桂 ▲6五歩 △7五桂 ▲6四歩
△8六歩 ▲同 歩 △6四銀 ▲7九桂 - 図30
図28では本譜の△5五角の他に△5六桂も考えられます。△5五角以降駒の交換が行われ後手が2枚替えを果たしたところで、先手怖いですがAI先生は後手の要の桂馬を攻める▲6六歩(図29)を推奨しています。これに対して後手は控えの桂から△7六桂と先手玉頭に迫りますが、先手も6筋で手にした桂馬を▲7九桂打と自陣の守りに使います。図30の局面は、先手は玉頭から攻め込まれていますが駒得も大きく、AI先生は+297互角と評価されていました。
図28から
△5六桂 ▲4六桂 △6八桂成 ▲同 金
△5五歩 ▲5四桂 △7二金 ▲7四歩 - 図31
図28から代わって△5六桂に対して▲同歩とするのは△6八角成とされて、角取りに打った5八の桂がぼけてしまいそうです。そこで先手も強く▲4六桂と角を取ります。以降後手が2枚替えを果たしますが、先手も5八に打った桂馬を▲5四桂と二段活用してからの▲7四歩打は厳しそうな一着です。△同銀には▲6四桂打(王手金取り)を狙っています。図31は先手指しやすそうな局面で、AI先生も+444先手有利と評価しています。
ここで本考察の区切りとしたいと思います。3回に渡って角換わり腰掛銀の先手平成型と後手令和型の攻防をみてきました。結論としては、後手は最善を尽くせば千日手に持ち込めそう(図8)で、仮に後手が△5五銀左(図9)や△3三桂(図32)と打開を図ってくれば先手互角以上に持ち込めそうです。概して桂馬が大活躍する楽しい将棋となります。ご参考まで。
今回は、この辺りで失礼します。
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