こんにちは
竜王戦の第2局は、藤井竜王が勝利され2連勝となりましたね。ここまでの2局を通じて、危なげなく藤井曲線で勝たれている印象です。棋風、研究派として良く似ていると言われがちな伊藤匠七段としては、勝つために何か「超えるもの」が必要なのでしょうが、絶対王者の壁は高そうです。伊藤七段苦難の状況ですが、モチベーション高く挑んでいただきたいと願っております。
さて今回は、先日行われたNHK杯2回戦第11局を振り返りたいと思います。王座戦で藤井竜王・名人と大熱戦を繰り広げた永瀬拓矢九段と、当時七冠独占していた羽生九段の牙城を最初に崩して棋聖を獲得した経験のある三浦九段の一戦です。
三浦弘行|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)
永瀬拓矢|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)
初手から
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △8四歩
▲2五歩 △8五歩 ▲7八金 △3二金
▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩
▲同 歩 △同 飛 ▲3四飛 △3三角
▲5八玉 △5二玉 ▲3六歩 △7六飛 - 図1
永瀬九段が後手番となり横歩取りの将棋に誘導されました。ABEMAトーナメント2023では、リーダーとして後手番を担当して横歩取りで勝ちまくっていたのが記憶に新しいです。相当研究されているのだと思われます。本譜、三浦九段が「青野流」で挑んでこられたのに対して、△5二玉と中住まいにしてから△7六歩~△7四歩と序盤から飛車交換を挑む激しい展開になりました。
図1から
▲7七角 △7四飛 ▲同 飛 △同 歩
▲3七桂 △7七角成 ▲同 桂 △8六歩
▲2二歩 △8七歩成 - 図2
序盤27手目で双方の駒台に飛車角がのりました。先手の両方の桂馬が跳ねて攻撃態勢が整いますが、手番は後手です。ここから△8六歩と手筋の「垂らしの歩」で先手陣を乱しにかかりますが、三浦九段はこれを無視して▲2二歩打。これに対して永瀬九段も無視して△8七歩成として益々激しい展開に進みました。研究していないと短時間で進められないような展開で、中盤を通り越して既に終盤といった状況になりました。
図2から
▲2一歩成 △7八と ▲3一と △7九と
▲3二と △8八飛 ▲7八歩 - 図3
△同飛成 ▲6八桂 - 図4
双方が相手玉の左側を食い破りと金を作りました。手番を握った永瀬九段が△8八飛打と王手で先着した手に対して、三浦九段は▲7八歩打とただのところに歩で受けました。「大駒は近づけて受けよ」で△同飛ときたら▲6八金打(図A)として飛車を弾く狙いかと思ってみていました。しかしこれは危険で、図Aから後手▲6九銀打として以下先手玉は▲4八玉もしくは▲5九玉と逃げるしかありませんが、いずれも以下に示す通り超手数の手順で先手玉が詰んでしまうようです。短時間で読み切られているのか、研究通りなのかは不明ですが、プロの凄さを感じます。
図Aから ▲6八金 △6九銀
a) ▲5九玉 △6八龍 ▲同 玉 △7八と
▲5九玉 △5八金 ▲同 金 △6八金
▲同 金 △同 と ▲4八玉 △5八と
▲3八玉 △4九角 ▲2九玉 △2八歩
▲同 銀 △3八金 ▲1八玉 △2八金
▲同 玉 △2七銀 ▲2九玉 △3八角成 - 図B
b) ▲4八玉 △6八龍 ▲5八桂 △同銀成
▲同 金 △5六桂 ▲3八玉 △5八龍
▲2七玉 △2六歩 ▲同 玉 △2五歩
▲3五玉 △4四金 ▲2五玉 △1四金
▲1六玉 △1五金打 ▲2七玉 △4九角
▲同 銀 △3九角 ▲2九玉 △3八龍
▲同 玉 △4八角成 ▲2九玉 △3八銀
▲1八玉 △2七歩成 - 図C
図4から
△6二玉 ▲6五桂 △6四角 ▲9五角
△8四歩 - 図5 ▲4八玉 △8五金
▲5三桂成 △同 角 ▲5四銀 △9五金 - 図6
詰めろ状態だった後手玉を一旦△6二玉と逃がしますが、攻めのターンが先手の三浦九段に回ってきました。▲6五桂跳ねから攻防に効かす▲9五角打と厳しく迫ります。この王手に対する永瀬九段の△8四歩は手筋の中合いですね。三浦九段一旦▲4八玉と龍から遠ざかりながら3七の桂にヒモをつけましたが、永瀬九段の△8五金打は永瀬九段らしい受けの手ですね。ここで三浦九段は果敢に▲5三桂成と飛び込んでいきましたがあまり良くなかったようです。△同角に▲5四銀打と後手玉頭に打ち付けましたが、△9五金と角を取って問題ないと永瀬九段は読み切られていました。
図6から
▲5三銀成 △同 玉 ▲2一飛 △5一歩
▲8二歩 △同 銀 ▲5五角 △6四銀
▲3三角成 △6二玉 ▲8三歩 △同 銀
▲4二と △2六歩 ▲同飛成 △7三玉
▲5一と △7二金 ▲6一と △7五歩 - 図7
局面は永瀬九段が優勢になっています。三浦九段が大駒とと金を駆使して永瀬九段の玉に迫りますが、永瀬九段の巧みな玉捌きで捕まえることができません。一手前に受けている感じです。図7の△7五歩で後手玉上部脱出への道が開かれ、永瀬九段の「負けない将棋」になりました。
図7から
▲3八玉 △7四玉 ▲2七玉 △6八龍
▲2一龍 △3二歩 ▲4三馬 △1五銀
▲1六歩 △2六歩 ▲1七玉 △2七角
▲3八金打 △3一桂 - 図8 ▲5二馬
△3六角成 ▲1五歩 △3八龍 - 図9
▲同 金 △2七金 ▲1六玉 △1四歩
まで92手で後手の勝ち
三浦九段の玉も盤上右辺に龍と馬がいて入玉ができそうかともみていましたが、永瀬九段の△3ニ歩打や△3一桂打(図8)等は非常に勉強になる手で、先手の大駒の位置をずらす手筋ですね。最後は鮮やかに龍を切ってから(図9)先手玉を端に追い込んだ局面で三浦九段の投了となりました。
一局を通して、序盤から非常に激しくなりあっという間に終盤になる将棋でした。そんな中でもプロの読みの深さ、歩を使った技、玉捌きを堪能できた非常に面白い一局でした。
今回は、この辺りで失礼します。
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