こんにちは
藤井七冠が挑戦者となり盛り上がりを見せている王座戦が開幕しましたね。第1局から期待通りの熱戦が繰り広げられました。終盤リードを奪った永瀬王座が「負けない将棋」を遺憾なく発揮して、最後は受けの好手△5一飛打で勝利を決めました。短期決戦5番勝負の後手番での勝利、非常に大きい一勝だと思います。次局は9月12日、神戸市「ホテルオークラ」で行われます。
さて今回は、先日行われたNHK杯2回戦第5局を振り返りたいと思います。両者竜王経験者で、アマチュアに絶大な人気を誇る同士の一戦でした。
渡辺明|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)
藤井猛|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)
初手から
▲7六歩 △3四歩 ▲6八飛 △8四歩
▲6六歩 △6二銀 ▲1六歩 △4二玉
▲1五歩 △5四歩 ▲3八銀 △5二金右
▲5八金左 - 図1
振り駒で藤井九段の先手番となりました。角道を止めるノーマル四間飛車の構えから早めの端歩突き、居玉のまま美濃囲いを作るいわゆる「藤井システム」の出だしとなりました。世に出てから30年位は経っているかと思いますが、今なお細かい工夫をされて採用されているのだと思います。見ているこちらも思わず期待してしまいますね。
図1から
△3二玉 ▲4六歩 △5三銀 ▲7八銀
△8五歩 ▲7七角 △7四歩 ▲4八玉
△3三角 ▲3六歩 - 図2
対する渡辺九段も「藤井システム」は当然想定しており、何らかの用意の作戦があるのではとみていました。まずは飛車先の歩を突きこしてから△7四歩として一瞬急戦を見せましたが、先手の▲4八玉をみて△3三角と持久戦調の手を指したりと先手に揺さぶりを掛けられました。
図2から
△4四歩 ▲3七桂 △2二玉 ▲6五歩
△3二金 ▲6七銀 △7五歩 - 図3
△4四歩~▲3七桂と間合いを図り、△2二玉と入ったのをみて▲6五歩と先手角道を開けました。後手玉をにらんでいます。これに対して後手が△3ニ金と守りを引き締め、先手が▲6七銀と力をためた局面で突如△7五歩と開戦されました。渡辺用意の一手でしょうか、AI先生の候補手上位には上がってませんでしたが、図3の局面を-85互角と後手番としてはまずまずの評価をされていました。
図3から
▲同 歩 △8六歩 ▲同 歩 △4五歩
▲同 桂 △7七角成 ▲同 桂 △8六飛
▲5三桂成 △同 金 ▲6四歩 - 図4
歩損となった後手は攻め続けます。飛車先の歩を突き捨ててから△4五歩と角道を開けました。△4五同桂が角銀両取りとなるため大胆な一手ですが、△7七角成~△8六飛と走った手が△8九飛成と△7六歩打の桂取りを見せて十分とみているのだと思います。先手苦戦のようですが、藤井九段も▲6四歩と手筋の歩突きを放ちます。油断ならない手で、誤って△同歩とすると▲6五桂の歩頭への桂跳ね(金取り)から▲7七角打の王手飛車があります。
図4から
△同 金 ▲6五桂 △7六歩 ▲7八銀
△3三角 - 図5 ▲5三桂成 △7七歩成
▲6四飛 △同 歩 ▲3九玉 - 図6
藤井九段の狙いを当然渡辺九段も読み筋で△6四同金とされました。金が玉から離れ、囲いは弱体化しています。5三の地点に目標がいないものの、王手飛車の狙いを込めて▲6五桂と桂馬を捌きます。これに対する渡辺九段の▲7六歩~▲3三角打が非常に味の良い手順となりました。△7七歩成を見せつつ王手飛車の憂いを一掃しました。藤井九段困ったようにみえましたが、▲5三桂成として△7七歩成に▲6四飛と勝負手を放ちました。次に▲4一銀打や▲4三銀打と絡んでいくのを狙っているのだと思います。「ガジガジ流」ですね。但しすぐに4筋から絡んでいくのは先手玉の位置が悪く、▲4六飛の王手から打った駒を取られてしまいます。これを嫌って▲3一玉としましたが、貴重な手番を後手に渡してしまい先手やはり苦戦です。
図6から
△7八と ▲4一銀 △4二歩 ▲5二金
△6八と ▲同 金 △2四桂 ▲3二銀成
△同 玉 ▲6三角 △2二玉 - 図7
局面は終盤戦です。△7八とと金を取られた先手は▲4一銀打~▲5ニ金打と持駒を投入して後手玉に迫ります。一方の後手は△6八とと捨てて先手の金を玉から離してから△2四桂打と逆サイドからの攻めを見せます。攻め合いを目指す藤井九段がさらに▲6三角打と駒を投入したのをみて、渡辺九段は△2二玉と「玉の早逃げ」で手を稼ぎます。ここら辺の渡辺九段の指し手は勉強になります。綺麗な手順ですよね。
図7から
▲5四角成 △4六飛 ▲3七金 △4九飛成 - 図8
▲同 銀 △4六銀 ▲3八金 △3七銀打
▲6一飛 △4七飛 ▲5八金 △2九金
まで後手の勝ち
リードを奪い渡辺九段が寄せを目指して行きます。8六の飛車を△4六飛~△4九飛車成とバッサリ切り飛ばしていきました。この局面でAI先生の評価値が大分先手側に戻っており、代わって△4八銀打(図A)を推奨されていました。▲同金に△2八銀打~△4八飛成を狙っています。本譜は飛車切の後、△4六銀打と迫り(▲同金に△3七銀打)ここでの▲3八金引が最後の敗着となり、△3七銀打~△4七飛打と渡辺九段が鮮やかに先手玉を寄せ切りました。
一局を通して、渡辺九段用意の作戦が見事にヒットしたようにみえました。藤井九段も上手く桂馬を捌いて後手玉に迫りましたが、渡辺九段の急所を見抜いての攻防が冴えていたようにみえました。綺麗な手順で勉強になりますね。
今回は、この辺りで失礼します。
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