香車は下段から

将棋のブログ。プロ棋戦、自戦記、戦型考察等々。

第73回NHK杯1回戦第4局 三浦九段対野月八段

こんにちは

叡王戦の第二局が行われ、挑戦者の菅井八段が勝利されましたね。相穴熊の将棋で、中盤以降は藤井叡王に付け入るスキを与えず完勝といった感じでした。これで1勝1敗のタイに戻り、次局以降ますます目が離せません。

挑戦者・菅井竜也八段が藤井聡太叡王に快勝 5年ぶりタイトル奪取へ前進 シリーズは1勝1敗に/将棋・叡王戦五番勝負第2局 | ニュース | ABEMA TIMES | アベマタイムズ

 

今回は、NHK杯テレビ将棋トーナメント1回戦第4局の三浦弘行九段対野月浩貴八段の一戦をレポートしたいと思います。

対局予定・結果 - NHK将棋 - NHK

三浦弘行|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

野月浩貴|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

 

振り駒の結果、野月八段の先手となりました。将棋は相掛かりとなり、先手は引き飛車に後手は浮き飛車に構えました。端歩を突かない昔風の差し回しでした。

 

先手が▲2七銀~▲3六銀と攻めの銀を繰り出したのに対して、後手は△6二銀~△4一玉~△5一金と低く中原囲いに組まれました。△5四歩と中央の歩を進めたのに対して▲6六歩と角道を止め穏やかな進行となりました。

 

駒組が進み、先手は雁木に構え後手は角銀を繰り替えました。先手が後手陣に隙ありと▲4五銀と歩を取りに進めましたが、後手も読み筋とばかり△7五歩と機先を制して中盤戦となりました。

 

互いに角を5段目に繰り出し捌きを求めました。先手の銀は▲3六銀と後退させられたのに対して、後手は駒を目一杯使っていたので後手が良い感じかなとみていました。AI先生的には評価値に差は無く互角の形勢と評価されていました。

 

中盤戦が続きます。△5四飛と中央に回ってきた手に対して▲6七金と中央を厚く構えたのですが、△8八歩が鋭い一手でした。▲同角と取れば△7五歩で先手銀が取られてしまいますし、本譜▲7七桂と逃げても△8九歩成と大きなと金ができます。後手が一本取りました。

 

後手の好調な攻めが続きます。飛車角交換となり、手番を握った後手が△7六歩で金を吊り上げた後△9四角打と金取りに指されました。この金取りを味よく受ける手段が難しかったようです。仮に▲6七金としても△7五歩が痛打となります(▲同銀は△同角 ▲同金 △6七角成で先手金を取られてしまう)。

 

終盤戦です。後手の厳しい攻めが繰り出される中、先手も▲7四桂~▲7一飛打と何とか食い下がります。しかしながら、△6一銀打や△3一玉といった後手三浦九段の万全を期した差し回しが光りました。A級在位19年の万一にも負けない指し手といったものを感じました。

 

最後は、6二で食いちぎった銀を△3九に打ちこみ、先手の飛車を奪って見事に後手三浦九段が寄せ切りました。一局を通して、私好みの中原囲いを駆使して見事に勝たれた三浦九段の差し回しは非常に勉強になりました。相掛かりでの中原囲いは、現代将棋ではあまり見られなくなっていましたが、実際は優秀な戦法なのかもしれませんね。

今回は、この辺りで失礼します。