香車は下段から

将棋のブログ。プロ棋戦、自戦記、戦型考察等々。

第72回NHK杯決勝 藤井竜王対佐々木勇気八段

こんにちは

WBCの準決勝の9回裏の映像を見ました。

鳥肌が立ってしまいました。この勢いのまま優勝して欲しいです。

 

今回は、昨日曜日に放送されたNHK杯決勝をレポートしようと思います。

振り駒の結果、佐々木勇気八段が先手で藤井竜王が後手となりました。

棋譜再生 - NHK将棋 - NHK

佐々木勇気|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

藤井聡太|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

 

双方が居飛車党で、将棋は相掛かりとなりました。序盤、飛車先の歩を切る気配を全く見せません。先手は、早めに▲4七銀と攻めの体制を見せ、後手は△5ニ玉~△7二銀とバランスよく中住まいの囲いに進めました。

 

図2の局面、▲7七金と△3三金は現代流の差し回しなのでしょうか。感覚的についていけないです。それほど時間を使わず指されていて驚きです。

 

37手目の▲2九飛と飛車を一つ下げる手では、▲2四歩~△同歩~▲同飛~△2三歩~▲2九飛とすれば先手が一歩を手持ちにすることができ得できたのではと思いました。AI先生の見解は▲2四歩が最善(+101)でしたが、読み筋を見るとa) ▲2四歩の瞬間に△3九角と飛車金両取りに角を打たれる or b)▲2四同飛に対して△2三銀と銀冠の形で盛り上がられるのを嫌ったのでしょうか。

 

以降、後手が8筋で歩を入手する代わりに先手は銀冠の構えを得て、7筋の桂馬を交換しました。55手目▲4七銀と駒を下げ囲いを引き締める手は、佐々木八段らしくないのではと感じました。AI先生も候補手の一つとして推奨しており研究手順なのかもしれません。

 

中盤のねじり合いが続きます。途中58手目△4五歩~△5五歩の藤井竜王の手の作り方はとても参考になりました。63手目▲6七金と形にとらわれず上がった局面も互角の形勢局面で均衡が保たれていました。この手で▲5五同歩は△3六歩~▲同銀~△5六桂打で後手が良くなりそうです。

 

引き続き中盤戦が続き、△9三角打と遠見の角で藤井竜王が攻め立てますが佐々木八段もしっかり均衡を保っていました。しかし、後手飛車先の△8五歩を無視して目障りな垂れ歩を除去した▲5六銀とした手で形勢が後手に振れたようです(-1,244後手優勢)。

 

以降、終盤は△7七との妙手(図7、同玉には△5九角打が痛打)を織り交ぜながら藤井竜王がリードを広げ、最後も見事に後手玉を即詰みに打ち取りました。藤井竜王NHK杯初優勝となりました。

一局を通して、序盤の研究が窺われ「The現代将棋」といった感じでした。中盤は長いねじり合いが続きましたが隙をついてそのまま寄り切った藤井竜王の中終盤の強さが顕著に表れた印象でした。強いですね。敗れてしまった佐々木勇気八段も、既に順位戦A級リーグ入りを決められており、来期NHK杯でも今期以上に躍進されることを願っております。

今回は、この辺りで失礼します。