こんにちは
今週は順位戦A級7回戦が行われましたね。菅井八段が渡辺九段に敗れて2敗目を喫してしまい俄然豊島九段が優位な展開となりました。その他注目しているのは振り飛車党に大変身を果たした佐藤天彦九段ですね。今期途中から振り飛車を指されるようになり、大山永世名人を彷彿させるような粘り強く強靭な指し回しで勝たれています。元々の棋風的に振り飛車がマッチしているのかもしれません。今後も大注目ですね。
さて今回は、先日放送されたNHK杯3回戦第5局渡辺九段と天彦九段の対局を振り返りたいと思います。
渡辺明|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)
佐藤天彦|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)
初手から
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △4四歩
▲4八銀 △9四歩 ▲9六歩 △3二銀
▲6八玉 △4三銀 ▲5八金右 △3三角
▲2五歩 △2二飛 ▲7八玉 △7二銀
▲5六歩 △6二玉 - 図1
振り駒の結果、渡辺九段の先手となりました。対局されたお二人は年齢も近く、若いころから親しい関係にあるようですね。名人経験のある両者の対戦成績は、渡辺九段の18勝7敗と意外にも離れていました。将棋は、序盤微妙な駆け引きを経て佐藤九段の向かい飛車となりました。
図1から
▲7七角 △7一玉 ▲8八玉 △8二玉
▲7八銀 △5四銀 ▲6六歩 △6四歩
▲5七銀 △5二金左 ▲6七金 △7四歩
▲3六歩 - 図2
対振り飛車に対して渡辺九段は穴熊というイメージがありましたが、本局は▲7八銀と上がり左美濃を採用されました。一方の佐藤九段も美濃囲いに組み上げ△6四歩~△7四歩と玉頭に膨らみを持たせました。図2の▲3六歩は後手の角頭を狙う一手で、局面に緊張が走ります。
図2から
△3二飛 ▲3八飛 △5一角 ▲8六歩
△8四歩 ▲8七銀 △7三桂 ▲7八金
△8三銀 ▲4六銀 △4五歩 ▲5七銀
△7二金 ▲9八香 - 図3
角頭攻めを察知した佐藤九段は、戦いが起こりそうな3筋に飛車を配置しました。振り飛車の常套手段ですね。これに渡辺九段も飛車を3筋に配置しました。ここから再び駒組が進んで双方銀冠に組み替えましたが、渡辺九段はさらに▲9八香として穴熊を目指しました。
図3から
△3三角 ▲9九玉 △4四角 ▲6八銀
△4二飛 ▲7九銀 △6五歩 ▲8八銀
△4六歩 ▲同 歩 △6六歩 ▲同 金
△6五歩 ▲5五金 - 図4
先手の穴熊宣言に対して、玉側の桂馬を既に跳ねている佐藤九段は穴熊にすることはできません。そこで△3三角と遠く先手の玉を狙う位置に設置します。さらに△4四角~△4二飛と大駒の位置を細かく動かしてから△6五歩と開戦していきました。△4六歩と突き捨てを入れてから△6五歩と先手の金頭を叩いた手に対して、渡辺九段も強く△5五金(図4)とぶつけていきました。本格的な中盤戦の開始です。
図4から
△同 銀 ▲同 歩 △6六歩 ▲同 角
△5六金 ▲6八飛 - 図5 △6六金
▲同 飛 △4一飛 ▲4五金 △2六角
▲6一銀 △6二金左 ▲7二銀成 △同 金
▲6四飛 - 図6
図4の局面をAI先生は+175互角と評価されていましたが、玉形の差が大きく6一に割打ちの銀のキズも抱えている後手が若干苦しそうです。それでも佐藤九段は金銀交換から手筋の△6六歩で先手の角をおびき寄せてから△5六金と力強く打ち付けました。しかしこれに対する渡辺九段の△6八飛(図5)が好手でした。歩切れの後手は先手の飛車先を止めるのが難しくなっています。ペースを掴んだ渡辺九段は、▲4五金として後手の角を僻地に追いやりながら後手の飛車の侵入を防ぎました。さらに▲6一銀から後手の金を一枚剥がしてから、一転して▲6四飛(図6)と柔らかい手を指されました。6五から飛車先を抑える手を事前に防ぐプロらしい一手に感じました。
図6から
△8五歩 ▲6三歩 △5四歩 ▲8五歩
△同 桂 ▲8六歩 △5六角 - 図7
▲6二歩成 △同 金 ▲同飛成 △同 角
▲5二金 △6九飛 - 図8
苦しめの佐藤九段も△8五歩と急所の玉頭に嫌味をつけていきました。渡辺九段は▲6四歩と大きな拠点を作ってから▲8六歩と後手の桂馬を取りに行きました。これに対する佐藤九段の△5六角(図7)はノータイムで指された鋭い一手でした。仮に▲8五歩と桂馬を取ると△8六歩と叩く手を狙っています(▲同銀なら△7八角成と金を取る)。これに対して渡辺九段も強く▲6二歩成~▲6二飛成~▲5ニ金打と激しく攻め込みました。穴熊の暴力です。しかし佐藤九段も両取り逃げるべからずで△6九飛(図8)と打ち込み激しい終盤戦になりました。
図8から
▲7九金打 - 図9 △2九飛成 ▲4一金
△7七桂打 - 図10
飛車に当てつつ穴熊を強化する▲7九金(図9)は堅さを好む渡辺九段らしい手にみえましたが、AI先生の評価はあまり良くなく形勢が互角まで戻りました。△2九飛成として桂馬を入手して△7七桂打(図10)となった局面は速度が逆転しているようでした。取られそうな8五の桂馬も働いていますね。佐藤九段の粘りが実りつつあります。
図11から
▲6七歩 △8九桂成 ▲同 金 △7七桂打
▲7九桂 △8九桂成 ▲同 玉 △6八歩 - 図11
▲3二飛 △7三銀 ▲8五歩 △6九歩成
▲8四歩 △同銀直 ▲8五歩 △9三銀
▲9五歩 △7九と ▲同 銀 △8六歩 - 図12
▲9四歩 △同 銀 ▲同 香 △8七歩成
▲同 金 △6七角成
まで118手で後手の勝ち
△7七桂のお替りで先手玉が大分弱体化しました。△6八歩(図12)はと金作りを目指した一手ですが、緊迫の終盤戦でじっと一手指せるあたり佐藤九段の強さが垣間見えました。渡辺九段も▲3ニ飛と反撃を試みますが、△7三銀と丁寧に受けられてしまい後手玉を崩すことができません。最後は△8六歩(図13)が厳しく入り佐藤九段が確実に先手玉を寄せ切りました。
一局を通して、▲6八飛の好手から渡辺九段の指しやすい局面が続いていましたが、佐藤九段が粘り強く指し続け△5六角がカウンターで入ってから形勢を盛り返しました。終盤は先手の一瞬の緩手を見逃さず△7七桂や△8六歩と穴熊玉の急所を確実について後手攻め合い勝ちとなりました。佐藤天彦九段の振り飛車強しですね。今後も楽しみです。
↑↑↑水匠5での解析結果↑↑↑
今回は、この辺りで失礼します。
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