香車は下段から

将棋のブログ。プロ棋戦、自戦記、戦型考察等々。

第49回将棋の日 次の一手名人戦 羽生九段対森内九段

あけましておめでとうございます。

今年も将棋のレポートをあげていきたいと思います。

よろしくお願い致します。

年明け最初のレポートは、昨年末に放送されました将棋の日次の一手名人戦の振り返りをしていきたいと思います。いずれも永世名人の称号を得ているレジェンド羽生九段と森内九段が対戦されました。早速見ていきましょう。

www.nhk.jp

羽生善治|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

森内俊之|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

 

初手から

▲7六歩    △8四歩    ▲6八銀    △3四歩    

▲7七銀    △6二銀 ▲2六歩    △4二銀    

▲2五歩    △3三銀    ▲4八銀    △3二金

▲5六歩    △4一玉    ▲5八金右 - 図1 

平成に将棋界を席巻したのは間違いなく”羽生世代”で、お二人は特に名人戦で幾多の名勝負を作られましたね。そして戦型は”将棋の純文学”と言われた矢倉となり、観ているものとして既に興奮状態です。近年の矢倉は後手が急戦を仕掛ける将棋が多いですが、本局は双方角道を止め持久戦調になりました。

 

図1から

△5二金    ▲3六歩    △7四歩 ▲7九角    

△5四歩    ▲6六歩    △3一角    ▲6八玉 - 図2    

△6四角 ▲3七桂    △4四歩    ▲7八玉    

△3一玉    ▲6七金    △8五歩 ▲4六歩 - 図3   

先手となった森内九段は、玉の動きを遅らせていましたが▲6八玉(図2)と早囲いの作戦を採用しました。これに対して後手の羽生九段は、早速△6四角と上がり先手の攻撃陣を牽制しました。これを▲3七桂と受けて、以降駒組が進みました。図3の▲4六歩(図3)では▲4六角とぶつける脇システム的な指し方もあるのかなとみていましたが、歩の下から駒が駒が進んでいく森内九段らしい本格的な指し回しでした。

 

図3から

△5三銀    ▲4七銀    △4二銀右  ▲6五歩    

△7三角 ▲5七角    △6四歩    ▲同 歩    

△同 角    ▲6五歩    △7三角 ▲9六歩    

△9四歩    ▲6六金 - 図4    △6三金    

▲5八金    △1四歩 ▲1六歩    △4三銀    

▲2九飛    △2二玉 - 図5   

最近では珍しい序盤の長い将棋になりました。後手が駒の繰り替えを図った△4二銀右に対して、先手が即反発して▲6五歩と位を張りました。後にこの位が争点になりそうでしたが、森内九段の位を守る▲6六金(図4)は形にとらわれない力強い一手でした。後手が△2二玉(図5)と入城して双方駒組を終え戦いが始まろうとしています。先手は大きな構えでバランスを保ち、後手は銀矢倉の堅陣を作りここからねじり合いが始まります。

 

図5から

▲1八香    △6四歩 ▲同 歩    △同 角    

▲6五歩    △7三角    ▲1九飛    △6四歩

▲同 歩    △同 角    ▲1五歩 - 図6   

△同 歩    ▲同 香    △1三歩 ▲6五歩    

△4二角    ▲4五歩    △同 歩    ▲3五歩 - 図7    

先手は▲1八香~▲1九飛として1筋からの攻めを見せました。これに対して後手は△6四歩~△同角~△7三角と後手番らしく待機策を取ります。再度△6四角となった局面で▲1五歩(図6)が良いタイミングで、端で香を入手してからの▲6五香の田楽刺しの狙いがあります。羽生九段も当然読み筋で香交換には応じず、再度の▲6五歩には△4二角と異なる位置に角を引きつけました。ここら辺の角の位置取りの意味は難しくて分かりません。ここから森内九段は、▲4五歩~▲3五歩(図7)と第二陣の攻めを繰り出して行きました。

 

図7から

△6四歩 ▲4五桂    △4四銀左  ▲3六銀    

△6五歩    ▲同 金    △7三桂 - 図8

▲4六角    △8六歩    ▲同 歩    △8八歩    

▲同 銀    △8六飛 ▲6六金    △3五歩    

▲3三歩    △同 桂    ▲同桂成    △同 角

▲7七銀    △8四飛    ▲4五歩 - 図9   

先手は3筋から、後手は6筋から攻撃を仕掛けていきました。後手△7三桂(図8)と遊び駒を活用して全軍躍動の総力戦となりました。激しくて堪りませんね。後手△3五歩と銀取りに打ちますが、先手は構わず指し手を緩めず桂交換から▲4五歩(図9)と銀取りに打ち返します。

 

図9から

△5三銀    ▲4四桂    △6五歩 ▲6七金引  

△6六桂    ▲同 金    △同 歩    ▲3五銀    

△3四歩 - 図10 ▲3二桂成  △同 玉    

▲4四桂    △4二玉    ▲8六歩 - 図11    

激しい中盤戦ですが局面のバランスは保たれていたようで、図9の局面をAI先生は‐147互角と評価されていました。双方急所に桂馬を放ち守り駒を剥がしていきます。序盤先手が取った6五の位が、この辺りの局面では逆に後手の攻めの足掛かりに代わっています。図10の△3四歩はとても強い手ですね。先手の攻めを呼び込みかねない一手ですが、羽生九段らしいリスクを厭わない強い一手でした。この辺りから局面は後手側に形勢が傾いていき、図11の▲8六歩と守りに手を回さらず得なくなった局面では、先手駒損が確定してはっきり後手が良くなりました。

 

図11から

△3五歩 ▲3四歩    △同 銀    ▲3二金    

△4三玉    ▲3三金    △同 玉 ▲1三香成  

△4五銀    ▲2三成香  △4三玉    ▲1一飛成  

△4六銀 - 図12 ▲6六銀    △8六飛    

▲4一龍    △3四玉    ▲8七歩    △同飛成 - 図13

▲同 玉    △6九角    ▲7八香    △8六歩    

▲同 玉    △8五歩 ▲7七玉    △8七金

まで134手で後手の勝ち

終盤戦です。優勢になった羽生九段はその後も指し手が正確でした。森内九段が1筋を食い破り龍を作りましたが、△4六銀(図12)と角を取り切り上部が開け後手玉が捕まらなくなりました。最後も△8七龍(図13)と切り捨て、鮮やかに先手玉を即詰みに打ち取りました。投了の一手となった△8七金も詰将棋っぽいカッコ良い手でした。

一局を通して、長い序盤戦から難解な中盤戦となり局面全体を使った大戦争となりました。両者の持ち味が遺憾なく発揮された非常に見応えのある将棋となりましたが、最後は羽生九段がリスクを恐れず放った受けの一手から形勢が傾き、まさに運命は勇者に微笑む形となりました。大満足の一局でした。

 

今回は、この辺りで失礼します。

 

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