こんにちは
西山女流名人への挑戦者が決まりましたね。リーグ戦をいずれも7勝2敗の好成績を収めた里見香奈女流四冠と若手の内山あや女流初段がプレーオフを戦い、里見女流四冠が貫録を見せました。これで女流棋界の2トップが再びタイトル戦で相まみえることとなりました。注目の五番勝負は年明け1月14日神奈川県箱根町「岡田美術館」で開幕します。注目です。
里見香奈|女流棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)
内山あや|女流棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)
西山朋佳|女流棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)
さて今回は、先日放送されたNHK杯3回戦第1局を振り返りたいと思います。対局したのは、関西を代表するA級棋士の一人稲葉陽八段と今期竜王戦で初のタイトル挑戦を果たした伊藤匠七段です。早速みていきましょう。
稲葉陽|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)
伊藤匠|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)
初手から
▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7八金 △3二金 ▲3八銀 △7二銀
▲6八玉 △1四歩 ▲9六歩 △7四歩 - 図1
振り駒の結果、伊藤七段の先手となりました。注目の戦型は相掛かりとなり、双方飛車先の歩交換はせず相手の出方を窺う展開となりました。
図1から
▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩
▲7四飛 △7三銀 ▲7六飛 △6四銀
▲2六飛 △4二銀 ▲7六歩 △8六歩
▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △8二飛 - 図2
図1の△7四歩をみて伊藤七段は飛車先の歩交換を行い、△2三歩に対しても▲7四飛として一歩得を果たします。先手良さそうですが、この後飛車の位置を戻すのに手損するためバランスは保たれているようです。一方後手の稲葉八段も先手の▲7六歩をみて飛車先の歩交換を行い一歩を手持ちにしました。
図2から
▲3六歩 △5四歩 ▲3七銀 △5三銀上
▲4六銀 △4四銀 - 図3 ▲3七桂
△3一角 ▲4八金 △7五歩 ▲3五銀 - 図4
角換わりと異なり力戦調になりやすい相掛かりの戦いですが、本局稲葉八段が居玉のまま2枚の銀を中央に繰り出す積極的な作戦を用いました。一方の伊藤七段は、6八玉とあがり▲3七桂~▲4八金と形を整えました。後手が△7五歩打と突っかけたところで、先手▲3五銀とぶつけて戦いが始まりました。
図4から
△同 銀 ▲同 歩 △4四銀 - 図5
▲7五歩 △同 銀 ▲5八玉 △8六歩
▲同 歩 △同 銀 ▲7四歩 - 図6
銀交換が行われた後、稲葉八段は△4四銀打として中央の制空権を保持しようとします。この後戦いが起こりそうな7、8筋から離れるように▲5八玉としましたが、後手構わず△8六歩から早繰り銀で突破を目指しました。先手角頭を飛車銀で攻められ難しそうな局面でしたが、伊藤七段は読み筋とばかりに▲7四歩打とカウンター気味に垂れ歩を放ちました。
図6から
△7二金 - 図7 ▲2二歩 △同 金
▲7三銀 △同 桂 ▲同歩成 △同 金
▲4四角 △同 歩 ▲4三桂 - 図8
図6の局面は、若干先手が指しやすそうな局面でしたが、ここで指された△7二金があまり良くなかったようです。ここから伊藤七段が▲2二歩打からの一連の手順で綺麗な王手角取りのふんどしの桂を決めました。必然の手順で進み、稲葉八段としても為す術がなかったかもしれません。
図8から
△6二玉 ▲3一桂成 △7七歩 ▲5三銀 - 図9
△7二玉 ▲7七桂 △同銀不成 ▲同 金
△5五角 ▲6六角 △同 角 ▲同 飛
△7四桂 ▲7六飛 △8九飛成 ▲6二銀打 - 図10
稲葉八段苦しい展開となりましたが、駒損を甘受しつつ△6二玉と玉を逃がしてから△7七歩打として反撃を試みました。しかしながら伊藤七段の追撃も厳しく、△5三銀打とただ捨ての銀を放ちます。同玉には▲7一角打の王手飛車の狙いがあります。稲葉八段も何とか先手陣に龍を作りましたが、伊藤七段も▲6二銀打と後手玉に確実に迫りました。
図10から
△8四金 ▲6一角 △8二玉 ▲8三歩
△同 金 ▲同角成 - 図11 △同 龍
▲7三金 △同 龍 ▲同銀成 △同 玉
▲7五歩 △8五銀 ▲7四歩 - 図12
△8四玉 ▲7三歩成 △7六銀 ▲7四飛
まで93手で先手の勝ち
先手伊藤七段が優勢な終盤戦です。▲6一角打から厳しく迫り、勝ちを読み切っているのか▲8三角成とズバット馬を切ります。稲葉八段としては持ち駒が豊富にあるものの、手番を握っている伊藤七段の攻めになすすべなく、伊藤七段がそのまま寄せ切りました。
一局を通して、相掛かりの後手番で稲葉八段が意欲的な作戦を用いましたが、一瞬の緩手を伊藤七段が見事に咎めてそのまま淀みなく寄せ切ってしまいました。伊藤七段の完勝と言えるかもしれません。竜王戦に挑戦しただけあって非常に勢いを感じる将棋でした。伊藤七段の今後の活躍にも大注目ですね。
今回は、この辺りで失礼します。
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