香車は下段から

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第73回NHK杯3回戦第2局 谷川十七世名人 対 八代弥七段

こんにちは

リコー杯女流王座戦第3局が行われますね。ここまで里見香奈女流王座が2連勝と王手をかけていますが、内容的には加藤桃子女流四段が押している場面が多くあったと思います。お二人の将棋は、対抗形のお手本になるような将棋が多く勉強になります。個人的には、居飛車党の加藤女流四段を応援したい気持ちではあります。ねじり合いの好局を期待しています。

live.shogi.or.jp

里見香奈|女流棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

加藤桃子|女流棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

 

さて今回は、先日放送されたNHK杯3回戦第2局を振り返りたいと思います。対局は、棋界の現役レジェンドの一人の谷川浩司十七世永世名人と昨年度のNHK杯でベスト4まで勝ち上がり棋戦優勝経験もある八代弥七段の一戦となりました。早速みていきましょう。

対局予定・結果 - NHK将棋 - NHK

谷川浩司|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

八代弥|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

 

初手から

▲2六歩    △3四歩    ▲7六歩    △4四歩    

▲4八銀    △9四歩 ▲9六歩    △3二飛    

▲2五歩    △3三角    ▲6八玉    △4二銀

▲7八玉    △6二玉    ▲5八金右  △5二金左  

▲7七角 - 図1   

振り駒の結果、八代七段の先手番となりました。注目の戦型は、谷川永世名人三間飛車を採用して対抗形の将棋となりました。八代七段が飛車先の歩を▲2五歩と詰めた後は双方玉の囲いに移り、17手目に▲7七角と上がって先手八代七段は持久戦を明示しました。

 

図1から

△4三銀 ▲8八玉    △7二銀    ▲7八銀    

△7一玉    ▲8六歩    △6四歩 ▲8七銀    

△7四歩    ▲7八金    △7三桂    ▲9八香 - 図2   

序盤の駒組が進みます。双方ひとまず美濃囲いに構え、そこから先手は上部を厚く銀冠に、後手は玉を7一に留めたままで△7三桂と攻撃的に構えました。これを見た八代七段は▲9八香と上がり、玉をさらに深く穴熊に組み姿勢を見せました。

 

図2から

△8四歩 ▲9九玉    △8三銀    ▲6八金右  

△6三金    ▲5六歩 - 図3    △7二金 

▲8八金    △8二玉    ▲7八金右  △5四歩    

▲3六歩    △6五歩 ▲5七銀    △1二香    

▲4六銀 ‐ 図4   

穴熊をみた谷川永世名人は、△8四歩~△8三銀と上部を手厚くしました。図3の局面では後手の飛車の横利きが通っており、先手の玉頭を狙って△8二飛と振りなおす手もありそうでしたが後手自重して△7二金から銀冠に囲いをすすめました。双方堅陣に構え戦機が熟しつつありました。先手▲4六銀と攻めの銀を上がり戦いが起こりそうな局面です。

 

図4から

△3一飛    ▲5五歩    △4五歩 - 図5

▲同 銀    △5五歩    ▲2四歩    △同 角    

▲5五角    △5一飛 ▲2二角成  △5九飛成  

▲2一馬    △5二銀    ▲2二馬 - 図6   

図4の駒組がほぼ終わった局面をAI先生は+280と評価されており、先手がやや作戦勝ちになっているようです。後手の銀冠も固いのですが、先手の銀冠穴熊はさらに固く且つ遠いですね。後手が△3一飛と一手待ったところで先手が▲5五歩から開戦していきました。これを△同歩と穏やかに取る手を良しとせず、谷川永世名人は△4五歩と突き違いの歩で対抗しました。以降先手は馬を、後手は龍を敵陣に作る展開となり激しい攻め合いが予想されました。八代七段は桂得を果たしている局面でじっと▲2二馬(図6)。非常に渋い手でした。取れる1ニ香には構わず、馬の利きを自陣に通しつつ▲2三馬として後手の角に当てる手も狙っています。じっと▲2二馬は強い人の一手だと思いました。

 

図6から

△5三銀 - 図7 ▲3五歩    △5六歩    

▲5八歩    △3五角    ▲7七馬    △4九龍

▲5五桂    △6二金引  ▲4三桂成 - 図8  

じっと▲2二馬の後に指された△5三銀があまり良くなかったようです。この手は▲5五桂を誘発してしまい、金が逃げた後▲4三桂成(図8)のスキを作っているからです。八代七段は、馬を自陣に引きつけ鉄壁の構えで攻めに専念できる格好となっています。穴熊ペースで終盤戦となりました。

 

図8から

△6六歩    ▲同 歩    △6四銀 ▲2三飛成  

△4七龍    ▲5四銀    △6八歩    ▲3六歩    

△4六角 ▲1二龍    △6九歩成  ▲6三香 - 図9   

△6一歩    ▲6二香成  △同 歩 ▲5二成桂  

△7九と    ▲6二成桂 まで87手で先手の勝ち

ペースを掴んだ八代七段は、タイミングよく▲2三飛成と飛車を成りこみ▲5四銀と遊び気味の銀も活用しました。谷川永世名人も6筋でと金を作り反撃を試みますが、先手陣の分厚い銀冠穴熊にはちょっと足りなそうでした。図9の▲6三香打が厳しく後手の受けも無く、以降八代七段がしっかり寄せ切りました。

一局を通して、対抗形の将棋となり銀冠穴熊の堅陣を作った局面で八代七段の駒組勝ちになっていたようです。以降、谷川永世名人の緩手を的確に咎め綺麗に寄せ切った八代七段の完勝譜だったようにみえます。強かったです。昨年度のベスト4以上の活躍がみられる可能性は十分にあるように思います。注目ですね。

↑↑↑水匠5での解析結果↑↑↑

 

今回は、この辺りで失礼します。

 

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