香車は下段から

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第73回NHK杯2回戦第1局 佐々木勇気八段 対 服部慎一郎六段

こんにちは

夏休み真っ只中ですね。猛暑、台風7号、ハワイマウイ島森林火災と日本、世界各地で災害や異常気象が続いています。被災各地の早期復興および災害対策が十分取られることを願っております。

さて今回は、先週行われたNHK杯2回戦第1局を振り返りたいと思います。対戦されたのは、今期から順位戦念願のA級入りを果たされている佐々木勇気八段と関西の若手実力者で勝率・レーティングも高い服部慎一郎六段です。

棋譜再生 - NHK将棋 - NHK

佐々木勇気|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

服部慎一郎|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

 

初手から

▲2六歩    △8四歩    ▲2五歩    △8五歩    

▲7八金    △3二金 ▲3八銀    △7二銀    

▲9六歩    △5二玉    ▲4六歩    △3四歩

▲2四歩    △同 歩    ▲同 飛    △7四歩    

▲2八飛    △2三歩 - 図1

振り駒の結果服部六段の先手となりました。注目の戦型は、服部六段の注文を佐々木八段が受けて立つ相掛かりとなりました。相居飛車の将棋では、角換わり腰掛銀よりもよく見られるような気がします。先手の▲9六歩の局面が後手の作戦の岐路になりますが、佐々木八段は△5八玉と中住まいに構える手を選択されました。その後、後手が角道を開けたところで先手が飛車先の歩を交換し、△2三歩に対して▲2八飛と深く引き戻しました。

 

図1から

▲4七銀    △7三桂    ▲7六歩    △6四歩    

▲5六銀    △8六歩 ▲同 歩    △同 飛    

▲8七歩    △8一飛    ▲9五歩    △6二金 - 図2

駒組が続きます。先手は▲5六銀と腰掛銀に構えて、後手中住まいの玉頭に存在感を示します。これに対して後手は、△7三桂の活用から飛車先の歩交換を行い、▲8七歩に対して手順に△8一飛と下段飛車の好形に組んでいきます。

 

図2から
▲5八金    △1四歩    ▲1六歩    △6三銀    

▲4五銀    △3三金 - 図3 ▲6六歩    

△5四歩    ▲6八銀 - 図4   

1筋の歩を突き合ってから先手は3四歩を目指して▲4五銀と進めました。これに対して、△3三金とする手は現代調の手ですね。以前の考察で似たような局面で▲1五歩から銀を捨てて龍を作りに行く手順(以下△同歩 ▲1ニ歩打 △同歩 ▲3四銀)を考察しましたが、銀を取らずに△2四金(図A)で後手耐えてるとAI先生は評価されていました。そこで先手は▲6六歩と角道を止めて、持久戦調の将棋になりました。

 

図4から

△4四歩    ▲3六銀    △3二銀 ▲6七銀    

△3一角    ▲6九玉    △5五歩    ▲4七銀    

△4三銀 - 図5

引き続き序盤戦といえる局面です。角道を止めた先手に対して、後手は△4四歩で一旦先手の銀を後退させました。その後△5五歩と中央に位を取ってから△4三銀と上がり後手はのびのびとした陣形になりました。一方の先手は雁木でとても連結の良い構えを築きましたが、手損をしており9筋を詰めた手も後手玉にはそれほど脅威にはなっていないようにみえます。AI先生の評価は互角ですが、後手番としてはここまでまずまずの展開なのではと思います。

 

図5から

▲5六歩    △同 歩    ▲5五歩 - 図6   

△9四歩    ▲同 歩    △9六歩 ▲5六銀右  

△9四香    ▲9八歩    △3二金    ▲3六歩    

△3三桂 ▲3七桂 - 図7   

そろそろ中盤戦です。早速先手から5筋の位に反発していきました。▲5六歩~▲5五歩は手筋といった手ですね。5筋の位の奪還を図りました。これに対して後手は、先手の9筋の位に反発して▲9八歩打と端を押し込むことに成功しました。双方の位に反発する応酬がみられました。ここまで均衡がとれていましたが、図7の▲3七桂で若干バランスが崩れたようでした。

 

図7から

△3五歩    ▲4七金    △5四歩    ▲同 歩    

△同銀右 ▲5五歩    △同 銀 - 図8   

▲同 銀    △5四歩    ▲同 銀    △同 銀

▲5五歩    △4三銀    ▲5四銀    △3六歩    

▲4三銀不成△同 玉 ▲3六金    △4七銀 - 図9   

前譜の▲3七桂はやや危険な手だったようです。代わる手も難しそうですが、本譜の通り後手から△3五歩の桂頭の歩の突き捨てから上手く手を作られてしまった印象です。途中銀挟みを見越した△5五同銀(図8)の強手もあり、後手の攻めが繋がっていきました。先手玉の左辺が壁になっており△4七銀打は厳しかったです。

 

図9から

▲3五金    △3六歩    ▲2七飛    △5六歩

▲7九角    △4八銀不成 - 図10 ▲5六銀    

△3七歩成  ▲2六飛    △3四歩 ▲4五歩    

△5七桂 - 図11    ▲6八玉    △3五歩

まで後手の勝ち

後手優勢で一気に終盤戦になりました。△3六歩~△5六歩~△4八銀と佐々木八段の歩と銀を使った小気味よい攻めが続きました。と金ができて攻めが切れることが無くなり、先手の希望の角でを阻止した△5七桂打の王手が最後決め手となりました。

一局を通して、佐々木八段が後手番ながら序盤から一手の緩みもなく差し回し、先手の一瞬のスキを突いて中盤以降は一方的に押し切った将棋になりました。佐々木八段の爽やかな快勝となりました。

 

今回は、この辺りで失礼します。

 

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