香車は下段から

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第73回NHK杯1回戦第7局 木村九段対大橋七段

こんにちは

王位戦の挑戦者が決まりましたね。挑戦者決定戦でレジェンド羽生九段に見事勝利した佐々木大地七段が藤井王位への挑戦権を獲得されました。佐々木七段は、棋聖戦挑戦も含めて藤井竜王とのタイトル戦12番勝負となります。非常に充実されているように見受けられます。対戦成績は2勝2敗の五分で、戦型は全て相掛かりだったようです。恐らく相掛かりを中心に、角換わりが数局といった感じになるのではと予想します。

佐々木大地七段「失うものは無いので前向きに」 師匠・深浦康市九段が3期経験した王位戦へ初挑戦決定 藤井聡太王位との七番勝負は7・7開幕! | ニュース | ABEMA TIMES | アベマタイムズ

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さて今回は、先日放送されたNHK杯木村一基九段と大橋貴洸七段の一戦をレポートしたいと思います。

対局予定・結果 - NHK将棋 - NHK

木村一基|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

大橋貴洸|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

 

初手から

▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩    

▲7八金    △3二金    ▲3八銀    △7二銀    

▲9六歩 △9四歩    ▲3六歩    △8六歩 - 図1    

振り後まで木村九段の先手となり相掛かり模様の将棋となりました。双方端歩を突いたり銀を進めることを優先して飛車先歩交換を後回しにするのは現代流です。先手▲3六歩に対してようやく後手から△8六歩と飛車先の歩交換を行ってきました。

 

図1から

▲同 歩    △同 飛    ▲6八玉 △1四歩    

▲3七桂    △7四歩    ▲2四歩    △同 歩    

▲同 飛 △2三歩    ▲7四飛    △7三銀    

▲8七歩    △8二飛    ▲7五飛 - 図2

図1以降、先手は▲8七歩とする手を保留しつつ▲2四歩と飛車先の歩交換に進めました。後手△2三歩と受けた手に対して▲7四歩と横歩を取り一歩得を果たしましたが、飛車の動きで手数が掛かってもいます。一方の後手は△8二飛と引きつけ低く陣形を保っています。

 

図2から

△3四歩    ▲2五飛    △4二銀    ▲7六歩    

△4四歩    ▲4六歩 △6四銀    ▲4七銀    

△4三銀    ▲4八金    △5四歩    ▲7七金 - 図3

序盤の駒組が続きます。後手が△4四歩~△4三銀と角道を止めつつ陣形を盛り上げました。これに対して先手も▲4六歩~▲4七銀~▲4八銀と中央を手厚く構えました。このまま駒組が進むのか、もしくは戦いが始まるの見ていたところ▲7七金と守りの金を一つ前に進めました。角道を止めて金が上ずり好形とは思えないのですが、木村九段の研究手なのかもしれません。

 

図3から

△5五歩    ▲7八銀    △5四銀    ▲2九飛    

△4五歩    ▲同 歩 △1三角    ▲6六金 - 図4

しばらく駒組が進みましたが、後手から△4五歩~△1三角と端角で攻めてきました。この端角は遠く▲6八にいる先手玉を狙っています。これに対して先手も力強く▲6六金と上がり中央を手厚くしました。これが図3▲7七金からの構想だったのだと思いました。

 

図4から

△3三桂    ▲4四歩    △4二飛    ▲1六歩

△4六歩    ▲5八銀    △4四飛    ▲1五歩 - 図5

後手の△4六歩打の楔から△4ニ飛と飛車も4筋からの攻めに加わりかなりの迫力でした。ところが先手はこの穏やかでない局面の中で、じっと1筋の端歩を進め後手の攻めを支えている端角に圧力をかけていきました。読みが入っていたとしても指しにくいような手に見えましたが、「千駄ヶ谷の受け師」木村九段の持ち味が十二分に出ていると思いました。

 

図6から

△4五桂    ▲1四歩 △2四角    ▲4五桂    

△同 飛    ▲2五歩    △3三角    ▲1三歩成

△7四桂    ▲3七桂    △4二飛    ▲4四歩 - 図6 

中盤の攻防です。4筋で桂馬が交換となりました。この後、先手の端歩突きが間に合い後手の端角が△3三角と追われ先手玉への脅威が大分減りました。図6の▲4四歩も後手の飛車と角の筋を同時に遮る「焦点の歩」で好手でした。

図6から
△8二飛    ▲2三と △同 金    ▲2四歩    

△同 金    ▲4三歩成  △同 銀    ▲4五桂

△4二角    ▲1一香成  △2五歩    ▲1九飛    

△1五歩    ▲7五金 - 図7

巧妙な△4四歩に対して、後手△8二飛と振り戻し△7五桂と絡めて8筋からの反撃を狙いました。これに対して、先手は歩の手筋を使って▲4五桂と駒を捌いてから▲1九香成と駒得も果たし先手好調な流れでした。図7の▲7五金も桂馬での金取りを逃げつつ力強く前進し、かつ角筋を通す味良い一手でした。

 

図7から

△8六歩    ▲同 歩    △同 桂    ▲8三歩    

△7八桂成  ▲同 玉 △7二飛    ▲6四金    

△同 角    ▲6五香    △8七歩    ▲6六角

△7六飛    ▲7七銀    △8八歩成 - 図8

先手が優勢な中盤戦ですが、後手も8筋から猛攻を仕掛けます。桂馬で先手守りの銀を奪い、△7六飛と王手で迫ります。後手に手持ちの金銀があり、先手受け間違えたら一気に敗勢になりかねない局面でした。

 

図8から

▲同 玉    △6六飛    ▲同 歩 △8六歩    

▲2一飛    △3一金    ▲2四飛成  △8七銀    

▲7九玉 △7六歩    ▲6四香    △7七歩成  

▲同 桂    △8九角    ▲6七角 - 図9

終盤戦です。先手は、▲2一飛打の王手金取りでさらに駒得となりましたが、後手は手番を活かして先手玉に迫りました。後手鋭く△8九角打ちとして先手玉に詰めろをかけましたが、▲6七角打ときわどく受けます。この辺り時間のない中での攻防は迫力がありました。

 

図9から

△7八銀打  ▲6八玉    △4七歩成  ▲8九飛    

△4八と    ▲3三角 △4二金打  ▲同角成    

△同 金    ▲2一龍    △4一角    ▲5三桂打 - 図10

△8九銀不成 ▲4一龍    △同 金    ▲同桂成    

△同 玉    ▲4二金 まで先手勝ち

後手も鋭く攻め続けましたが、木村九段の受けは最後まで正確でした。▲5三桂打の繋ぎ桂が詰めろで決め手となり先手の木村九段の勝利となりました。

一局を通して、中終盤大橋七段の迫力ある攻めが続いていましたが、木村九段の力強く正確な受けが光りました。間合いを見切った1筋の端歩突き、4四の焦点の歩、詰めろを防いだ6七角打等がとても印象に残りました。

今回は、この辺りで失礼します。

 

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